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29.「若貴騒動」を考える
ここに至っては「若貴騒動」を論じぬわけにもゆくまい。兄弟の感情的なしこりについては、二人の人柄や事の真相を知らぬ私の関知するところではない。だが年寄名跡の存在意義や継承問題については一家言ある。
騒動の一部は名跡の継承問題に起因している。渦中の人物が若貴兄弟だから、マスコミもこぞって取り上げているが、こうしたトラブルは以前からたびたびあった。相撲界が抱えるいくつかの問題点が、若貴によって白日の下にさらされたに過ぎない。
ず名跡の資産的価値に言及したい。名跡は有価証券のたぐいではない。われわれ一般人にとっては全く効力のないもの、だが相撲界の中では億単位の価値があるものだ。
もともと名跡は売買の対象ではなく、親方から弟子に部屋を譲るにあたっての形式的な証文だった。事実、日本相撲協会は今もって名跡の売買を公式に認めていない。部屋が一つの家族であり、親方と弟子が親子であった古き良き時代の精神を尊重したいがためであろう。だが現実に行われている名跡売買に目をつぶり、それによって今回のような騒動をうやむやにしてきた弊害は否めない。
挿絵と文章は関係ありません
代若乃花こと元二子山親方が、大関貴ノ花こと故二子山親方に部屋を譲ったときは、その代価として3億円が支払われた(国税当局による追徴課税が行われたことにより、この金額が明るみになった)。
現立浪親方(もと小結・旭豊)が先代から部屋と名跡を引き継いだときは、旭豊が先代の娘婿だったこともあり無償だった。やがて先代の娘との離婚がきっかけで、先代は名跡譲渡に対する支払いを求めて訴訟を起こし、一審の東京地裁は旭豊に1億7500万円の支払いを命じた。2審の東京高裁では、事前の売買契約が行われなかったことが理由で、旭豊の支払い義務は無いという逆転判決が下ったが(最高裁も先代の上告を却下)、名跡の資産的価値は司法によって公然と認められたことになる。
き二子山親方がいかなる考えを持っていたのか、今となっては知る由もない。1年以上にわたる闘病生活のどこかで、名跡や財産についての意思を明確にしておかなかったことが、今の嘆かわしい状況をもたらしてしまった。一相撲ファンとしては、若貴兄弟の確執はどうあれ、名門二子山(現貴乃花)部屋と2人の横綱の栄光が、こんなスキャンダルで汚されてしまうのが何とも口惜しい。
協会が沈黙を保っていることに何より腹が立つ。この騒動を収められるのは日本相撲協会しかあるまい。今後は親方が定年を迎えたら協会が名跡を買い上げ、適任者に売り渡すのが好ましのではないだろうか。適任者の選択は、先代の直弟子を優先するとか、オークション形式にするとか、様々なやり方が考えられる。ともかく名跡の移動が白日の下にさらされない限り、こうした問題は今後も頻発するに違いない。北の湖理事長の英断に期待したい。
(2005/07/01)
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