TEL:0176-23-5714
受付:09:00〜17:00 定休日:日曜、祝日
相撲期間は毎日営業 偶数月の土曜日は休業
ライン

15.土俵祭に想う
あって春場所の土俵祭(どひょうまつり)を見てきた。本場所の前日に行われる行事で、新しく作った土俵を清め、神々を鎮めるという意味がある。古式ゆかしい一連の儀式は神聖かつ厳粛で、明日から始まる激闘が、単に「勝敗を競うためのスポーツ」ではないことを実感する。
立行司2人が祭主となり、相撲協会からは北の湖理事長と審判委員らが列席。土俵の四隅にお神酒が捧げられ、続いて「方屋開口(かたやかいこう)」と呼ばれる祝詞(のりと)を奏上する。言葉の意味は解らないが、土俵の由来、勝負の道理、五穀豊穣の祈りなどを述べているそうだ。そして最後に土俵中央に鎮物(しずめもの)として米、スルメ、昆布、塩、カヤの実、かち栗の6品を埋め、その上からお神酒をかけて終了した。
俵は場所後に取り壊されるので、場所ごとに新設される。土俵を作るのは行司の役目で、土盛りから俵作りまで全工程を行司だけで完遂する。一辺6.7mの正方形の土台に形成されるのは内径4.5mの丸い土俵。合計20個の俵を使い、4分を地上に、6分を地面に埋めながら円を描いてゆく。俵の、地上に出ている部分の高さは5cmで、寸法が同じことから「浅草の観音様」と表現される。
仕切り線は白いエナメルを使って引かれる。幅6cmの長さ80cmで、二本の線の間隔は70cm。この狭間に、前述の鎮物が埋まっている。土俵の鬼、初代若乃花は「土俵に金が埋まっている」と言って若い衆を叱咤激励したそうだが、実は米や栗が埋まっていたのだ。
挿絵と文章は関係ありません
り屋根についても言及しよう。伊勢神宮などに見られる「神明造り」という様式で、アルミの骨組みにケヤキの木材が使われている。屋根裏にはテレビ中継用の照明が何個も取り付けられ、総重量は実に6トン。それをたった2本のワイヤーロープで吊っている。
屋根の下に張り巡らされた幕は「水引き」といい、紫地に白く桜の紋章が染め抜かれている。桜は日本相撲協会の紋。その名の通り幕は水の流れを表したもので、けがれを祓って清浄にするという意味がある。
四隅に垂れる房は四季と神を表す。即ち東の青房は春で青龍(せいりゅう)、南の赤房は夏で朱雀(すざく)、西の白房は秋で百虎(びゃっこ)、北の黒房は冬で玄武(げんぶ)。青龍、朱雀、百虎、玄武の4神は天地を司る神として、かの高松塚古墳の壁画にも描かれている。
水引きが清め、4神が見守る土俵で、力士たちは相撲を取っている。そう考えれば、なぜ彼らが戦いの前に塩をまき拍手を打つのか解ってくる。
場所になると、決まって大阪府の女性知事が「土俵に上げろ」と騒ぎ立てる。女性を土俵に上げないしきたりは男女不平だとまくしたてる。そうだろうか?
そもそも土俵の中に米や栗が埋まっている必要はない。屋根を吊ったり、幕や房を垂らしたからといって、相撲の決着が変わるわけでもない。不合理と言えば不合理。これはあくまで儀式なのだ。精神的な部分で、相撲をどう捉え、何を拠り所とするかの問題だ。家を新築した人が(たとえその人が無信心であっても)地鎮祭を行うのと同じことなのだと思う。土俵祭についての意味を知り、「あれはあれでいいものだ」と思いながら帰ってきた。
(2004/05/01)
バックナンバー 次のエッセイを読む

お知らせ


ホームページがリニューアル致しました。
一部現行のページで運営致しますが、随時更新してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

■新ホームページへ■



リンク

ツイート