episode 41: 馬産農家の生活

泉華陽という画家がいました。山形県米沢市の生まれで、父親が獣医だったため幼時から馬に親しんでいました。東京美術学校を卒業した後、各地に修行の旅を重ね、知人の縁で七戸を訪ねた時に馬産の盛んな様子を見て居住を決意します。
春夏秋冬、雨の日も雪の日も馬の描写に余念なく、独自の画風をものにしました。作品の中に七戸産場組合(七戸畜産農協の前身)の依頼で書いた『七戸地方農家年中行事』という12枚の水彩画があります。同地方の馬産農家を主題に1年間の生活風景を描いたもので、大正中期の作品。その中から何枚かを選び、そのころの生活をしのんでみましょう。
  • 2月 産馬組合の指導員が明け2歳馬の発育検査に回って来た。体高、胸囲、管囲などを測っている。向こうの田んぼでは、馬ソリで固めた雪道を雪上運動させている。
  • 3月 技術員が巡回して来てツメ切りをする。その向こうでは妊娠馬の乳の具合を見ているが、馬を引いているのも農家の主婦も腹ボテ。
  • 4月 "田のくろ"に青草が出て来て、たい肥運びも始まる。よく手入れされた馬を散歩させる子供が、老人のやせ馬と会って自慢している。
  • 5月 梅、桃、桜が一時に開く南部の春。田打ちが始まった。各町村とも1〜2カ所、村はずれに土塁を回した種付け所があって、はやる雄馬に引きずられるようにしてやって来る。
  • 7月 6月に放牧された馬は、青草をたっぷり食べてすくすく育つ。そのころ里では田の草取り、蚕の飼い付けと一年中で一番忙しい時期。
  • 8月 放牧地を監視人が見回って、発育状態や故障馬の有無を確かめる。マグサ場では野干し草を刈る。1頭分の干し草を用意するのに1人1週間もかかった。
  • 9月 実りの秋。放牧馬も丸々と肥えた。農家は栄養のあるハギ(豆科)を収穫して、軒下に干す。ヒエやアワの殻と混ぜて冬の間の飼料とした。
  • 10月 南部2歳駒(ごま)の晴れ舞台。"おセリ"の日。全国から馬商が集まってセリ声が飛び交う。多い年は2000頭も出場、1カ月ほどもかかった。一段高い席から「2000円。軍馬御用!」の声がかかり、場内がどよめく。
  • 11月 取り入れ。稲12把(わ)を1束とし、6束で馬1頭分の1駄(だ)とした。農夫は自分も一束背負って運ぶ。この春生まれた当歳駒は、片時も母馬のそばを離れようとしない。

国道4号線沿いにある「道の駅しちのへ(七戸町)」には、美術館が併設されています。そこには同町の見町観音堂と小田子不動堂に奉納された南部小絵馬を初め、我が国最古といわれる羽子板など、国の重要有形民俗文化財として指定された歴史的に貴重な資料などが多数展示してあるります。次は同町ゆかりの華陽作品を展示する予定だと聞いています。

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