episode 28:
えんぶり
八戸地方の郷土芸能えんぶりの発生起源には、南部一族の糠部(ぬかのぶ)下向に由来するいくつかの伝説がある。いずれにせよ、その年の豊作を祈り、予祝する民俗芸能であることに変わりない。その所作は苗代作りから田植えまでの一連の農事を表現していると言われるが、これまた馬と深いつながりがある。
えんぶりの衣装の特徴は巨大な烏帽子(えぼし)。これは馬の頭を表し、実際これを「うま」と呼ぶ老人もいる。烏帽子には南部小絵馬を思わせるような馬の絵が描かれることが多く、たてがみに当たる五色の紙の飾りを「やま」というのは、これを御幣に見立て、田の神が降りてくる招き代(しろ)と考えたものだ。
菅江真澄は、昔の東北地方の民話の数々を収録した「ひなの一ふし」に「八戸田植踊」として、えんぶりにおける藤九郎の口上を「ゑんぶりすりの藤九郎が参た。白き名馬は33匹。黒き名馬は33匹…」と紹介している。また岩手の田植え踊りに馬を引き出しているさまも描写している点から、八戸の「えんぶり」にも馬が一役買った時代があったのかもしれない。
早乙女役も実際に女性が演じたと思われるが、芸能としての性格が強まるにつれて、いくつもの役柄が烏帽子太夫に統合整理されたのだろう。太夫は、烏帽子をかぶったときから田の神であり、馬であり、馬を操作する人となる。神・人・馬が一体となって豊作予祝の踊りを踊るのが『えんぶり摺り(すり)』だ。「摺り込み」のとき、旗のぼりが立つ。立った所が田の水口という見立てだが、昔から、この水口が田の神の降り立つ所という考え方が広くあった。
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