ウ−フ;WWOOF(Willing Workers On Organic Farms)という制度、もしくは組織があって、十和田乗馬倶楽部はそこに所属している。旅行者に宿と食事を提供し、その代価として労働してもらう制度だ。ワーキング・ホリデーと違って金銭のやり取りはない。
好奇心と活力にあふれ、だけどもお金はあまり持ってないという若者にとっては、非常に魅力的な制度だろう。宿泊費や食費をかけずに世界各地を旅することができるのだから。地元の人と共に働き、共に生活するのだから、ありきたりの旅行よりも深く触れ合うこともできる。風習や文化、言葉などを学ぶこともできる。おまけにここなら、乗馬をマスターすることも可能だ。というわけで、働きに来たいと申し出てくれるウーファーがひきもきらない。
我々は厩務作業を手伝ってくれる人を常に必要としている。それに給料を払わなくて済むなら、それに越したことはない。かといって、誰でも彼でも受け入れることはできない。素行の悪い人や、悪意を持って近寄ってくる人は御免蒙りたい。旅行者だって、泊めてくれるならどこでもいいというわけではなかろう。健全な倫理観を持ったホストが、適量で安全な仕事を与えることが分かっているからこそ、未知なる相手を訪ねることもできるはずだ。
ウーフ本部からは定期的にメールが届き、問題を起こしたウーファーが実名で報告される(同じようにウーファーたちには、問題のあるホストが報告される)。だから私たちは、初対面のウーファーを安心して受け入れることができている。実際、これまでに受け入れた30人のウーファーたちは、みんなフレンドリーで一生懸命に働いてくれた。
ここを希望するウーファーのほとんどは外国人だ。しかも大半が女性だというところが興味深い。やはり外国人にとって馬は身近かな存在で、特に女性にとって馬の世話は楽しいことなのではないだろうか。
希望者が多いので、私はできるだけ乗馬の心得があるウーファーを選んで受け入れている。中には我々スタッフよりずっと馬の扱いに長けたウーファーもいる。そんな人に馬房掃除だけをさせておくのはもったいない。馬の調教や乗馬レッスンのアシスタントなんかを頼む時もある。忙しくて手が回らなかった未調教馬が、ウーファーが帰る頃にはすっかり調教されていたりして、そのままここのスタッフとして引き止めたい気持ちになったりすることもある。
ここへ来たウーファーたちの国籍はほぼ5カ国に限られる。即ち、アメリカ7人、イギリス6人、フランス3人、ドイツ2人。いずれも世界に名だたる「馬の国」の国民だ。彼らと仕事をし、食事をする中で得るものは大きい。馬に関する話題はもちろん、各国の歴史や文化、価値観といったものを知るのも新鮮で楽しい。日本に、それも北国の田舎に住んでいながら、世界各国の若者と語らうことができる。こんな楽しい日々はない。
会話は基本的に英語だ。だがお互いに信頼し合い、友好が分かち合えれば、言葉なんて大した障害にならないことも知った。 農作業を手伝っている年配のパートさんたちでも、彼ら外国人ウーファーと楽しそうに仕事をし、談笑することができる。タキおばさんがカトリーナやジョアンナを連れてニンニクの収穫に出かけ、ケンポおじさんがテーやジョッシュに牧柵作りをしている。そんなインターナショナルな農作業風景を見ていると、改めて平和の尊さなんかも痛感する日々である。
2008/11/01 TOY
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