Data #10:今場所の目玉商品
豊昇龍
横綱として初の巡業を完走。27日、東京・八王子市で行われた春巡業最終日に参加。朝稽古では相撲は取らず、土俵下での基礎運動で汗を流した。約1カ月間の春巡業を振り返り「まあ、疲れたね。もう5月場所も近いし、これからは、どうやって体を休ませていくか。巡業で、やることをしっかりやったので」と、稽古で相撲を取らない日も、体づくりを続けており、今後は疲労を抜くなど、調整も大事になっているとみていた。2日前の25日の巡業では腹痛に苦しんだ。その日は、24日の夕食で食あたりを起こして稽古に参加できなかったが、この日は「大丈夫」と、復調をアピールしていた。
大の里
28日、2場所連続で東の正大関に座った。先場所は12勝3敗で3度目の優勝を果たし、初の綱とりに挑む。春場所で大の里は、新横綱豊昇龍が途中休場する中、番付最高位としての責任を果たし、3場所ぶりに賜杯を抱いた。千秋楽まで恩のある高安との優勝争いを演じ、優勝決定戦で直接対決を制した。春巡業では横綱や大関琴桜らと稽古を積み、調整を進めてきた。優勝翌場所は成績が振るわないジンクスを打ち破る決意を込める。
琴櫻
復活を目指す夏場所に向けて、順調な仕上がりをアピール。24日、神奈川・川崎市で行われた巡業の稽古で若隆景、熱海富士の両前頭と計10番取って8勝2敗。過去7勝6敗と対戦成績が良いとはいえない若隆景には4戦全勝だった。技巧派の下からの寄りを組み止め、危なげなく寄り返すなどスケールの大きな相撲で圧倒。「(巡業の稽古は)なかなか番数を重ねられるわけじゃないから、中身が大事」とうなずいた。
大栄翔
春巡業最終日の稽古で、ひときわ存在感を発揮。27日、東京・八王子市で行われた巡業に参加。多くの三役以上の力士が、相撲を取る稽古を行わない中、大栄翔は申し合いで次々に名乗りを上げ、計15番で8勝7敗だった。相撲を取る稽古では、その日によってテーマを設け、これまではあえて不得意な四つに組んだ体勢からの稽古なども多かった。だがこの日は、立ち合いから突き、押しという本来の相撲で番数を重ねた。それでも、5月11日の夏場所初日を2週間後に控え「ここからが本当の稽古。しっかりやりたい」と、前向きに話した。
高安
28日、夏場所の新番付で、先場所優勝同点の12勝と活躍し東小結に昇進した。小結だった2024年初場所以来、8場所ぶりの三役復帰となる。高安は春場所の優勝決定戦で大関・大の里に敗れ、35歳での悲願の初賜杯は逃したが、技能賞を受賞。13度の三賞受賞は武双山、土佐ノ海、琴光喜と並ぶ歴代7位の記録。
若元春
東前頭筆頭の若元春は番付運に泣いた。春場所は西前頭筆頭で9勝6敗も三役復帰ならず。上位の転落者が少なく、高安の躍進があり、半枚の昇進にとどまった。
王鵬
23日、茨城・常総市で行われた春巡業で、大関・大の里との三番稽古を含めた計9番相撲を取った。今巡業では積極的に土俵に上がり横綱、大関相手に稽古を重ねる。「(稽古を)買ってもらえているので、ありがたい。いい相撲と悪い相撲があるので、しっかり前に出る圧力のある相撲を取れるように頑張りたい。相手に持っていかれることもあるし、しっかり押し込める時もあるが、もっと地力をつけていかないといけないなと思う」と語る。
玉鷲
28日、東前頭3枚目となり春場所から4枚半番付を上げた。今場所も鉄人は、いくつもの記録がかかっている。幕内在位は94場所目で、歴代6位で並んでいた寺尾を抜いて単独6位となった。歴代4位の高見山と安美錦の97場所まで、あと3場所。現時点で通算1688回出場で、3日目に歴代6位の若の里に並び、4日目に単独6位。幕内出場回数は1392回。このまま出場すれば7日目に歴代4位の安美錦に並び、8日目に単独4位。初土俵からの通算連続出場記録は、春場所終了時点で1688回(コロナ関連での休場はカウントされないため)。これは単独トップで、休場するまで記録を伸ばしていくことになる。
平戸海
春巡業中の20日、25歳の誕生日を迎え、三役返り咲きに強い意欲をにじませた。「この一年は全部勝ち越して、三役へ戻りたい」と自己最高位を目指して飛躍を狙う。大関琴桜に指名され連続14番取って2勝12敗だったが、持ち味の鋭い出足で寄り切る場面も。幕内力士による申し合いでは7勝3敗だった。「頭を上げずに取りたい。疲れてくるとどうしても上がってしまう」。欠点を自覚し、これまで消化した番数は屈指の存在だ。
安青錦
春巡業は27日、東京都八王子市で25日間の全日程を終了した。ウクライナ出身の21歳、幕内安青錦は初参加の巡業を終えた。支度部屋では尊敬する若隆景の隣に荷物を広げ、多くの学びを得たという。北陸地方で味わった海の幸がおいしかったそうで「初めて行く場所ばかり。付け人に『今、どこにいるの』と聞きながら過ごした」と初々しかった。新入幕の春場所では11勝を挙げ、敢闘賞に輝く大活躍だった。幕内中堅に番付を上げることが予想される夏場所へ向け「先場所に負けない成績を出したい。そんなに甘くはないが、目標は高く持っていく」と眼光を鋭くした。
獅司
25日、神奈川・秦野市で行われた春巡業で3番相撲を取った。その中で連日行われる横綱、大関の三番稽古では土俵下に座り、熱心に稽古をみつめる。「相撲のうまい人を見て、それを覚えてできるようにしたい」。実際に見た動きを稽古場でも試しているといい「相撲は難しい。(再現できた動きは)ちょっとだけ」と笑顔で語った。上位陣との対戦も経験し「上の人と当たれて良かった」と振り返った。
熱海富士
26日、横浜市で行わた春巡業で関取衆による申し合い稽古に参加。さらに大関・大の里に指名されて三番稽古。24年は幕内上位に定着し新三役にあと一歩のところまで迫ったが、初場所、春場所は2場所連続で負け越し。「結果が全てなので。番付が下がっていて結果が出ていないので頑張るしかない」と夏場所での巻き返しを誓う。
狼雅
2場所ぶりの返り入幕。右ハムストリング筋損傷で春巡業を休場。
嘉陽
28日、新入幕を果たし、東京・両国国技館で記者会見に臨み、抱負などを語った。元関脇嘉風の中村親方が創設した部屋で初の新入幕となり、目標を問われると「けがをしないように頑張る」。こう話した直後、隣に座った師匠から耳打ちされ「10番勝って、中村部屋初の三賞をもらいます」と大幅に修正した。中学から大学まで同じ進路を歩んできた1学年後輩で綱とりを目指す大の里について、「頑張ってもらいたい」。
玉正鳳
2場所ぶりの返り入幕。
栃大海
28日、新入幕を果たし師匠の春日野親方とともに東京・両国国技館で会見に臨んだ。25歳は番付表を手に「やっぱり一番上の段を目指して頑張っていたので。上がれてうれしいなという気持ちがある」と笑顔を見せた。春日野部屋からは2011年技量審査場所の栃乃若以来14年ぶりの新入幕。春日野親方は夏場所に向け「勝ち越しはもちろん、ケガなく無事に自分の相撲を取ってもらえれば」と期待を込めた。